2010年12月30日木曜日

OB・OG会は年寄り向け……では困る

 12年前の創立50周年記念パーティー以来、OB/OG向けの大規模な行事に押し寄せるのは中高年が大半ということもあり、お相伴で飲み食いさせてもらった現役の間に「稲門会とかOB会って、おじ(い)さんおば(あ)さんのための組織なんじゃないの?」といった思い込みが広まってはいないかと心配している。名前はジェネラルだが、早混OB・OG合唱団だって1960年代の先輩方が中心になってやっていて、1970年代以降の早混人はほぼ皆無という状況だから、若い連中が「稲門会なんてオレたちには関係ない」と思い込んでしまうのも無理からぬ。


 50年史を手がけ、CDの選集を出したときもそうだったが、OB/OGがらみの活動に金を出しているのは大部分が年寄りなのだから、本の内容も音源の選曲も昔のものを中心にしろ…という注文をしてくる年寄りには手を焼いた。一方で、年長者の懐ばかりアテにするなとお叱りを頂くこともあれば、筆者の同期で役員だった男からは「卒団してまだ日の浅い若い連中ほど、今の早混に対する愛着は強いはずだから、彼らにこそ積極的に資金協力を求めるべきだし、それに応える義務が若手にこそあるのではないか」という“逆転の発想”(笑)に驚かされたものである。

 要するに、老若に関係なく、自分たちが出すいわれがないか、大義名分の乏しい金の無心には気乗りしないのは当たり前なのだろう。だから(早混人のノスタルジアを人質にとっているみたいな後ろめたさもあるのだが)年会費を出し渋る人からは本やCDその他の事業活動の対価としてお金を頂くようにして、不公平感の生じないように腐心することも戦略としては重要かもしれない。しばらく前の話だが、「50年史なんてどうせ年寄りの思い出話や自慢話を並べて若い連中に買わせようというのだろう。そんなものごめんだ」とか悪態をついていたらしい学年の話を耳にしたのだが、その後、結婚式の二次会か何かで誰かが「久遠のハーモニー」を持ち込んで回し読みしたら、一気に風向きが変わって、ひと学年で十数冊も申し込みが殺到したことがあった。編集長以下、特定の年代にのみ重きを置くような本にしないよう心を鬼にして原稿や資料を揃えたのが功を奏したのだと、小躍りして喜んだ次第。OB/OG会の活動は、本来かくあるべきものなのだと思う。

 「金を出すのは年寄りだけ」という仮説は、自分たちが主導権を握りたがる年寄りが意図的に言い募っている面もあって、実際はそうでもない。数年前のデータだが、早混の創立50年史を刊行するにあたって、本の購入ないし寄付をして下さった卒団生の在籍者に対する比率を各期・各学年ごとに集計したところ、極端に金離れのよい年と悪い年はあるものの、5~10才刻みの年齢層でみると、30代の卒団生と70代の卒団生とも、協力してくれた人の割合は大差なかったのである。もちろん、仕事や子育てに忙しい年代よりは、功成り名を遂げた年代の方が金額は多かったものの、実際に関心をもち、送金されたパーセンテイジはほぼ同じだった。だから、若い連中の意向をないがしろにして年寄りの顔色ばかりうかがうようなことを続けていたら、OB/OG会やその活動は早晩行き詰まることは明らかだ。若手や中年のOB/OGの意識を無視して、「どうせ、年を取れば自然と入ってくるさ」とタカをくくっていたら、「新人」のトシヨリには見向きもされなくなってしまったOB・OG合唱団の失敗を繰り返してはなるまい。